釜塚の金右衛門一党の盗賊・雲津の弥平次は、上州と越後境の湯治場で、崖下に倒れていた一人の侍を助ける。その若者は何者かに襲われ深い傷を負い、すべての記憶を失っていた。 女房のしまと共に、男を介抱した弥平次は、自分の名から一文字とって「谷川弥太郎」と名づけ、一期一会と別れていく。 数年後、江戸― 首領亡き後、一党の跡目争いに巻きこまれていた弥平次は、ある夜偶然、弥太郎が人を斬る姿を目撃する。 依然として記憶が戻らない弥太郎は、香具師の元締・五名の清右衛門に拾われ、仕掛人となっていた。彼の身を案じた弥平次は、清右衛門のもとから